信州・岩村田は古くから、交通の要衝として栄えた場所。
江戸時代のはじめには中山道の宿場町として発展し、多くの人が行き交いました。
戸塚酒造の初代・戸塚平右衛門が駿河国(現・静岡県掛川市)からこの地に移り住んだのもこの頃です。徳川家の家臣として岩村田周辺の統治を任された彼は、駿河で学んだ酒造知識を生かし、どぶろく造りを始めたと言われています。
それからおよそ360余年。
品質ひと筋に、街道をゆく旅人たちを癒してきた小さな酒蔵は現在16代目を数え、長野県でも3指に入る長い歴史を数えます。浅間山麓の冷涼な空気と清らかな水、地の米。
自然を生かし伝統を守り継ぐ中で、時代に合わせたたゆまぬ挑戦も続けながら、飲む人の心をほどく良酒を醸しています。
戸塚酒造が大切にしているのは、地域の風土を生かした酒づくりです。
舌にのせればその土地の空気、その土地の色が感じられるように、使うのはすべて長野県産の米。その中でも酒造りに適した品種を厳選し、米由来のアルコールと八ヶ岳山麓の伏流水ですっきりと仕上げています。
酒づくりは四季折々、自然の恵みと共に歩みを進めます。春には浅間山を映す広い田に苗を植え、秋には収穫を喜び、焼酎に使う芋や米の栽培も自分たちの手で行います。
寒さに強い麦類は高台の有休農地でも育てられますし、製造過程で出る穀物の絞りかすは発酵させ、肥料や飼料として使うことも可能です。ゆったりと自然のサイクルを回し、自分たちもその循環の中で働くこと。日常のせわしなさを忘れさせる深い味わいは、そんな豊かな時間の中から生まれています。